そのドアを開けたらゾンビがいる

わかっているんだけどねぇ〜☆

インディー・クラシックからはじまったクラシック入門への道

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はじめに

今更ですが音楽遍歴はというと、子供の頃の歌謡曲にはじまり、ブラック・ミュージック、ロック、ヒップホップ、テクノをはじめとしたクラブ・ミュージックといろいろ手を変え品を変え聴いてきました。幸いにも飽きることもなく癖(ヘキ)として未だに知らないジャンルの音楽を聴くのが好きです。

音はモチロンのこと、頭の中にざっくりした見取り図、相関図を思い浮かべながら未知なるシーンを把握していくのは何にも代えがたい楽しさがあります。

しかし、いつもクラシックとなると門前払いされているかのような難しさの前に退散するしか無い(十分な偏見だと思いますが)高い壁で、そもそも入り口がわからないし、音楽的な専門知識があるわけでもないし、膨大な歴史を目の当たりにするとただただ立ち尽くすばかりでした。有名な作曲家の名前は知っていても、どれから聴けばいいのかわからない。どのCDを買えばいいのかわからない。

運良く1枚、あるいは1曲に辿り着いたとして、その先どこに向かえばいいのかまったく見通しが立たない。難しく考え過ぎなんでしょうが、どうしても一歩が出なかった。

 

インディー・クラシックというムーブメント

クラシックとかジャズというと、歴史と評価が確固たるものなのか、ロックやヒップホップ、クラブ・ミュージックなどと比べると今の時代を代表するミュージシャンというのが見えづらいと感じていました。もちろん過去の名作や偉人はスゴいことには違いありませんが、いかんせん身近な存在ではない。

そのモヤモヤを少しずつ溶かしていたのが、先行してハマっていたジャズ(往年の名作とかではなく現代の同時代的なもの)で、Apple Musicも駆使しながらこれらを聴き漁っていくナビゲーションとして重宝していた『Jazz The New Chapter 3 』(以下、JTNC3)は、現在のジャズを取り巻く活発なシーンをさまざまな視点から取り上げており、その特集のおかげでそれまであまり縁がなかったラージ・アンサンブルやチェンバー・ミュージックのようなものにもオモロさを感じて手を出すようになります。

そして、同書の「インディー・クラシック」の特集を読んで、ジャズと同様に現在のクラシックの一部のシーンはなかなかオモロそうだ、という印象と、魅力的な「入り口」を見つけました。

それが「インディー・クラシック」というムーブメントです。そのキーワードには、

「ポスト・ミニマルの再興としてインディー・クラシックがあるのに対して、ポスト・クラシカルはドローン/アンビエントから派生してきたものという整理」

インディー・クラシックについてのメモ|八木皓平|note

というような定義・考え方があるようで、音を形容するキーワードとして捉えるとより具体性が出てくるのですが、どちらかと言うと私は以下のブライス・デスナーが言うような「シーンの光景」と捉えています。

若いクラシック系の楽団/アンサンブルが、インディロックバンドみたいな動きをしはじめているっていうことなんだ。自分たちでレーベルで運営し、自分たちでフェスティヴァルをやったりし始めているよ。つまりDIY精神というか、ポストパンクなアティチュードが若いクラシック演奏家のなかに入ってきた

The Nationalの頭脳ブライス・デスナー:「インディ化するクラシック」と越境する音楽家の新しいモデル « WIRED.jp

ムーブメントの便宜上の名前として捉えているのは、間違いなくそこに「最近のクラシックはヤバいぞ」という熱気を感じているからで、かつてパンクやグランジやあるいはテクノでも感じてきた高揚感のくすぶる匂いに強く惹かれています。

 

キーパーソンとレーベル

具体的な所に目を落としていくと、個人的に入りやすかったのは「代表的なレーベル」が挙げられていた点で、これはテクノやエレクトロニカを通過してきた身としては「自分の知ってる道」を歩くかのような安心感がありました。

テクノにハマった時も、アーティストと同じかそれ以上にレーベル自体に絶大な魅力があり、いわゆるレーベル買いのような音楽との出会い方はかなり耳を拡げてくれました。求道的なレーベルから坩堝のようなレーベルまで、レーベルカタログという「目利き」が提示してくれる音楽群を聴くというのは、良い意味で相手に委ねる心地よさとその相手をじっくり選び抜くスリルが同居しています。

それがどうやらクラシックにもあるっぽいぞ?と知ったおかげで、このシーンに対して圧倒的な親近感が湧いてきました。テクノとおなじ感覚で聴けばいいじゃん、と。

さらにすっかりお世話になっているApple Musicのおかげで、気になった音を片っ端から探して聴けるレコード屋さんに住んでるかのような恵まれた環境を活かし、JTNC3などで挙げられていたインディー・クラシック3大レーベル『Cantaloupe Music』『New Amsterdam』『Bedroom Community』を片っ端から漁ります。

と同時に、良いレーベルというラインでの掘り方にあたりがついたおかげで、他のラインの掘り方にも食指が伸びていって、気に入ったアルバムに対してアーティスト(奏者)だけでなく「作曲家」というテーブルが大きな意味を持つこともなんとなくわかってきます。考えてみたら他のジャンルだってそういうテーブルで聴いてるものもあるのですが、いかんせん長年の偏見のせいでまったくピンと来ない身体になっていた。

そうすると、そのカタログからたびたび同じ名前が目につくようになり、インディー・クラシック特集の記事なども手伝って、代表的なアーティストにもたどり着きます。

たとえばBang On A Canの作曲家3人(ジュリア・ウルフ、マイケル・ゴードン、デイビット・ラング)が設立したブルックリンのレーベル『Cantaloupe Music』を例に取ると、Bang On A Can All Starsと作曲家の3人は当然の事ながら、他にもSo Percussionなどはカタログ内で何度も目にするアーティスト名です。何枚もリリースしていると当然その違いが気になりますし、その先にはコラボレーションの相手として、前出のブライス・デスナー(Bryce Dessner、The Nationalのギタリスト)、Glenn Kotche(Wilcoのドラマー)、Matmos(Bjorkのリミックスやアルバムへも参加)、DJ Spookyといった「非クラシック」どころかロックバンドのメンバーやら、変態エレクトロニカのユニットやら、DJという冠がついた名前までが、作曲だったり演奏だったりでクラシック・コレクティヴにコミットしています。 

この、それぞれの出自がクラシック界には限らないということが、どうやら近年は予想事情に発展しているようです。

The NationalというバンドのメンバーであるBryce Dessnerはクラシック・現代音楽の作曲家としての活動も盛んで、自身のレーベルなどからのリリースやサントラへの楽曲提供も活発、その彼とドイツ・グラモフォンからコペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団(アンドレ・デ・リッダー指揮)による演奏のスプリットアルバムを出しているのはあのRadioheadのJonny Greenwood。ポール・トーマス・アンダーソン監督作のサントラなどでも大活躍です。また、Bryce Dessnerのレーベルからもリリース(アメリカ流通?)したクラシック畑出身Nico Muhlyは、アメリカ・在住ですがアイスランドのレーベル『Bedroom Community』の共同設立者でもあり、BjorkやAntony & The Johnsons、Joanna Newsomなどのプロデュースやアレンジワーク、コラボレーションでも有名で、さらにクラシックだけでなくオペラなんかの作曲まで手掛ける才人。

それまでのマンガのような先入観である音楽室の肖像画みたいな人は、当たり前ですがぜんぜんいなくて、クラシック界にいるものの世代が近ければ当然通ってきている音楽や文化は近いわけで、そういうクラシック・ミュージシャンたちがたくさんいたんです。そして、インディー・クラシックなコミュニケーションで人脈を拡げ、自由な発想から生まれるコラボレーションでオモロい作品をつぎつぎと世に出していくのです。

 

あとは聴くだけ、今よく聴いている10選

魅力的なシーンと人の繋がり方がぼんやり見えてきたら、あとは音でそれを実感に変えていくだけです。これだけ自由度の高いシーンですから、完全なる入門編というのはなかなか難しく、インディー・クラシックな音のどこに魅力を感じるか、どのあたりに引っかかるかによってまったくオススメが変わってくる。かくいう私も初心者ですからオススメとは言わずに、今よく聴いている10選というスタンスで並べてみます。Apple Musicでインディー・クラシック3大レーベルを中心に色々聴いていた中でひっかかったもの10曲です。どれかがキッカケとなって、私が経験したような目からウロコのキッカケになれば幸いです。

Apple Music のdubstronica「自由が丘ラジオ №5」

Apple Musicを使っている方は、このプレイリストで以下の10曲が聴けます。気になるアーティストはアルバム単位で聴いてみたりがすぐできるので便利ですね。

使っていない方も埋め込みプレイヤーで集めてみましたのでどうぞ。

「Folk Music」Now Ensemble(Now) 

「Mothertongue: I. Archive」Abigail Fischer(Mothertongue)

「Behavior Patterns」Build(Place)

 

「Beaming Music」James McVinnie(Cycles)

「Loneliness」Emily Hall(Folie à deux)

「Beautiful Mechanical」yMusic(Beautiful Mechanical)

「The Ascendant: No. 1, The Beginning And」Roomful of Teeth & Jason Treuting(Render)

「We are, We own」Puzzle Muteson(Theatrics)

「Tooth and Nail」Nadia Sirota(Baroque)

「Death Speaks: No. 1, You Will Return」Shara Worden, Owen Pallett, ブライス・デスナー & ニコ・ミューリー(Lang: Death Speaks)

 

さいごに

インディー・クラシック3大レーベルがApple Music内でリリースしている作品をそれぞれプレイリストに集めました。新譜が出たら随時更新していくと思います。

Cantaloupe Music

Apple Music のdubstronica「New Amsterdam」

Apple Music のdubstronica「Bedroom Community」

お役に立てば幸いです。

Jazz The New Chapter 3 (シンコー・ミュージックMOOK)

Jazz The New Chapter 3 (シンコー・ミュージックMOOK)

 

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