映画『ムーンライト』をようやく観ました。作品賞の受賞など、幸か不幸か公開前に少し斜めの角度から取りあげられることが多かった本作ですが、事前情報を最低限に留められたおかげで、あまり身構えることができないまま鑑賞できました。これは本当に良かった。
ガツンと脳天を殴られるかのような衝撃を受ける映画もあれば、トロ火でジワジワと内側から温めていってホロホロになった心をいとも簡単にほぐしてしまう映画もあります。どちらが良いというような問題ではなく。本作は後者のタイプの傑作だと思います。
観おわった後も行き着く所のない余韻がつづいています。そういったものを頭に中に思い浮かべながら声に出すなら「あぁ、良かった」の一言に変換してしまうのですが、それはあまりにふらふらと『ムーンライト』のもつムードに、まさにその明かりの下にいたいという感覚に近く、だから感想と言うよりはただただ反芻するようなことを続けています。
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